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2021年12月11日

ロンドン海軍軍縮条約(1930年4月22日)(第1章)

官報掲載のものを、現代仮名遣い及び現用漢字に直して記載したものです(後日口語調のものも作成する予定)

公布

朕枢密顧問の諮詢を経て昭和5年4月22日「ロンドン」に於いて帝国全権委員が亜米利加合衆国、英帝国、仏蘭西国及伊太利国の全権委員と共に署名調印したる1930年「ロンドン」海軍条約を批准し茲に是を公布せしむ。

御名御璽

昭和6年1月1日

内閣総理大臣臨時代理
 外務大臣 男爵 幣原喜重郎
 外務大臣 男爵 幣原喜重郎
 海軍大臣 男爵 安保 清種

条約

第1条

亜米利加合衆国 大統領、フランス共和国大統領、「グレート、ブリテン」「アイルランド」及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下、伊太利国皇帝陛下並に日本国皇帝陛下は
競争的軍備に常に伴う危険を防止し且負担を軽減せんことを希望し並に「華府」海軍会議に依り開始せられたる事業を進展せしめ且軍備の一般的の制限及縮少の漸進的実現を容易ならしめんことを希望し
海軍軍備の制限及縮少に関する条約を締結することに決し依って左の如く其の全権委員を任命せり

亜米利加合衆国大統領
 国務長官 「ヘンリ、エル、スティムスン」
 英国駐箚大使「チャールズ、ジー、ドーズ」
 海軍大臣「チャールズ、フランシス、アダムズ」
 「アーカンソー」州選出上院議員「ジョーゼフ、ティー、ロビンスン」
 「ペンシルヴェーニア」州選出上院議員「デーヴィド、エー、リード」
 白耳義国駐箚大使「ヒュー、ギブスン」
 「メキシコ」国駐箚大使「ドワイト、ダブリュー、モロー」

仏蘭西共和国大統領
 内務大臣、内閣議長、下院議員「アンドレ、ダルディェ」
 外務大臣、下院議員「アリスティード、ブリアン」
 海軍大臣、下院議員「ジァック、ルイ、デュメニル」
 殖民大臣、下院議員「フランソア、ビエトリ」
 英国駐箚仏蘭西共和国大使「エーメ、ジョゼフ、ドゥ、フルリオ」

「グレート、ブリテン」「アイルランド」及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下
 「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」並に国際連盟の個々の連盟国に非ざる英帝国の一切の部分
  国庫尚書件総理大臣、下院議員「ジェームズ、ラムジ、マクドナルド」
  外務大臣、下院議員「アーサー、ヘングスン」
  海軍大臣、下院議員「アルバート、ヴィクター、アレグザンダー」
  印度大臣、下院議員「ウィリアム、ウェデウッド、ベン」
「カナダ」
  国防大臣、「カナダ」枢密顧問官、陸軍大佐「ジェームズ、レートン、ローストン」
  仏蘭西国駐箚「カナダ」特命全権公使、「カナダ」枢密顧問官「フィリップ、ロア」
「オーストラリア」連邦
  貿易及税関大臣「ジェームズ、エドワード、フェントン」
「ニュー、ジーランド」
  「ロンドン」駐在「ニュー、ジーランド」高級委員「トマス、メースン、ウィルフォド」
南阿弗利加連邦
  「ロンドン」駐在南阿弗利加連邦高級委員「チャールズ、シアドア、ティー、ウォーター」
「アイルランド」自由国
  「ロンドン」駐在「アイルランド」自由国高級委員「ティモシ、アロイシアス、スミディ」
印度
  「ロンドン」駐在印度高級委員「サー、アトゥール、チャンドラ、チャタジー」

伊太利国皇帝陛下
 外務大臣、下院議員「ディノ、グランディ」
 海軍大臣、上院議員、海軍戦隊少将「ジウゼッペ、シリアンニ」
 英国駐箚特命全権大使「アントニオ、キアラモンテ、ボルドナロ」
 上院議員、海軍大将、男爵「アルフレド、アクトン」

日本国皇帝陛下
 貴族院議員若槻礼次郎
 海軍大臣、海軍大将財部彪
 英国駐箚特命全権大使松平恒雄
 白耳義国駐箚特命全権大使永井松三

右各全権委員は互に其の全権委任状を示し是が良好妥当なるを認めたる後左の如く協定せり

第1章

第1条

締約国は1922年2月6日「ワシントン」に於いて書相互の間に署名せられ且つ本条約に於いて「ワシントン」条約と称せらるる海軍軍備に関する条約の第2章第3節に規定せらるる主力艦代換トン数の龍骨据付の自国の権利を1931年ないし1936年の期間中行使せざることを約す

右規定は不慮の事変に依り亡失し又は破壊せられたる艦船の代換に関する前記条約第2章第3節第1号(ハ)に掲げられる規定の適用を妨ぐることなし

尤も仏蘭西国及伊太利国は前記条約の規定により1927年及1929年に自国が起工するの権利を与えられたる代換トン数を建造することを得

第2条

  1. 合衆国、「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」連合王国並日本国は左の主力艦を本条に規定せらるる主力艦を本条に規定せらるる所に従い処分すべし

    合衆国
     「フロリダ」
     「ユタ」
     「アーカンソー」又は「ワイオーミング」
    連合王国
     「ベンボー」
     「アイアン、デューク」
     「マーバラ」
     「エンペラー、オブ、インディア」
     「タイガー」
    日本国
     比叡

    (イ) (ロ)の規定を留保し前記艦船は「ワシントン」条約第2節2(ハ)に依り専ら標的用に変更せられざる限り左の如く廃棄せらるべし
    合衆国に依り廃棄せらるべき艦船中の1隻及連合王国に依り廃棄せらるべき艦船中の2隻は本条約の実施の時より12月以内に「ワシントン」条約第2少第2節3(ロ)に従い戦闘任務に適せざるものと為さるべし右実施の時より24月以内に右第2節2(イ)又は(ロ)に従い確定的に廃棄せらるべし合衆国に依り廃棄せらるべき艦船中の第2隻並に連合王国に依り廃棄せらるべき艦船中の第3隻及び第4隻に付ては右機関は本条約の実施の時より夫々18月及30月とす
    (ロ) 本条に依り処分せらるべき艦船中左記は練習用の為保有せらるることを得
     合衆国 「アーカンソー」又は「ワイオーミング」
     連合王国 「アイアン、デューク」
     日本国 比叡
    右艦船は本条約第2章第2付属書第5条に規定せらるる状態に減勢せらるべし右艦船の要求せられたる状態に減勢するの作業は本条約の実施の時より合衆国及連合王国に付ては18月以内に又日本国に付ては12月以内に始すべし右作業は前記期間の満了の時より6月以内に完了せらるべし
    右艦船中の何れかにして練習用の為保有せられざるものは本条約の実施の時より18ヶ月以内戦闘任務に適せざるものと為され且30月以内に確定的に廃棄せらるべし
  2. 本条約第1条に掲げられる代換トン数を仏蘭西国又は伊太利国が建造することに依り「ワシントン」条約に依り必要と為るべきことあるべき主力艦の処分を別とし「ワシントン」条約第2章第3節第2号に掲げらるる一切の現存主力艦にして処分せらるべきものと前号に於いて規定せられざるものは本条約の有効期間中保有せらるることを得
  3. 代換の権利は代換トン数の起工の遅延により失わるることなく且旧艦は代換せらるるを至る迄は「ワシントン」条約第2条第3節第2号に依り廃棄の期限の到来せる場合と雖も保有せらるることを得

第3条

  1. 「ワシントン」条約の適用については該条約第2章第4節に示さるる航空母艦の定義は茲に左の定義を以て之に代う
    「航空母艦」なる用語は排水量の如何を問わず特に且専ら航空機を搭載するの目的を以て設計せられ且艦上に於いて航空機の発着し得る構造を有する一切の水上艦船を包含す
  2. 主力艦、巡洋艦又は駆逐艦に航空機の着艦用又は離艦用の台又は甲板を装備することは右艦船が専ら航空母艦として設計せられたるか又は改造せられたるものに非ざる限り右の如く装備せられたる艦船を航空母艦の艦種に算入し又は分類するに至らしむることなし
  3. 1930年4月1日より現存する主力艦には航空機着艦用の台又は甲板を装備することを得ず

第4条

  1. 口径6.1インチ(155ミリメートル)を越える砲を搭載する基準排水量1万トン(1万160メートル式トン)又は之に達せざる航空母艦は何れの締約国も之を取得し又は之を建造し若しくは建造せしむることを得ず
  2. 一切の締約国に付本邦訳の実施せらるる時より口径6.1インチ(155ミリメートル)を越える砲を搭載する基準排水量1万トン(1万160メートル式トン)又は之に達せざる航空母艦は何れの締約国の法域内に於いても建造せられざるべし

第5条

航空母艦は各場合に従い「ワシントン」条約第9条及び第10条により又は本条約第4条に依り認められるものに比し一層有力なる砲を搭載する為の設計及び構造を有せざることを要す

右第9条及び第10条の何れの場所におけるを問わず口径6インチ(152ミリメートル)と掲げらるる時は口径6.1インチ(155ミリメートル)を以て之に代う

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